2009年10月31日土曜日

ハロウィン

 昨年のハロウィンの朝方だった。おばあちゃんが息を引き取ったのは。
 いつも、まわりに感謝の心を忘れない、常に気遣いをしている素敵なひとだった。
 訃報を聞いて親戚が集まり、うちは賑やかになった。
 湿っぽくならないようにするためか、みんな涙は見せず普段通り振る舞っている様子だった。
 おばあちゃんは、旅支度を整えられていた。
 「今日はハロウィンだから、おばあちゃん仮装しているだけなんじゃない」
 いとこに言ったあと、泣きそうになった。
 いや、本当に仮装だったらいいのに、とこの時は思った。
 
 
 外の風に当たろうかと抜け出したら、ワタルもついてきてくれていた。
 「楽しいイベントなのに、こんな話してごめんね」
 「かまわないよ」
 彼はそれだけ言って、ただ一緒に少し肌寒くなるような風に当たっていた。
 しばらくして、酒の席に戻ると、私はオレンジ色のとんがり帽子を被った。


 記憶力の乏しい私が忘れないように、おばあちゃんはこの日を選んだのかもしれない。
 


 
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